ハンバーグはひき肉をよくこねます。
こねないレシピも存在しますが、それはハンバーグステーキなどのように肉の味を活かすことを第一に考えられているレシピに適しています。一般的なハンバーグやミートローフ、ミートボールなどにはこねるレシピがおすすめです。
ハンバーグはこねることでしっかりした口当たりになります。
今回の記事は次のような人におすすめ!
- ハンバーグのひき肉をこねる目的は?
- ひき肉をこねるとどのような変化を起こすのか?
- 食塩の有無や温度による違いは?
ひき肉はこねることで粘りがでます。
ハンバーグのひき肉をよくこねるのは、ひき肉に粘りをだして肉のうま味や水分を閉じ込めやすくするためです。粘りがでるのは筋原線維タンパク質であるミオシンとアクチンが混ざり合うことでアクトミオシンが網目構造を形成するためです。
アクトミオシンの形成こそがひき肉をこねる目的になっています。
ひき肉をよくこねることによる変化とは?
ひき肉はこねることで粘りが生まれます。
ひき肉をよくこねると筋原線維タンパク質のミオシンとアクチンが混ざり合ってひも状のアクトミオシンに変化します。アクトミオシンはつながって網目構造を作るためにひき肉に粘りがでます。このアクトミオシンこそがひき肉をこねる目的です。
アクトミオシンによりひき肉の接着力は強くなります。
粘りがでるまでこねたひき肉はまとまりが良くなります。アクトミオシンにより網目構造が形成されているひき肉を加熱すると、熱変性により網目構造はさらに強い結合となり肉のうま味や水分を閉じ込められるようになります。
しかしそのままでは硬くしまった仕上がりになりますので、副材料(炒めたタマネギやパン粉など)を加えて適度なもろさを出します。
ひき肉に食塩を加えてこねる理由は?
筋原線維タンパク質は塩溶性です。
ひき肉をこねると筋原線維タンパク質(ミオシンとアクチン)が混ざり合ってひも状のアクトミオシンに変化します。この際、塩を加えてこねることにより塩溶性タンパク質であるミオシンが溶解して分散することによりアクチンと結びつきやすくなります。
塩を加えると粘りがでやすいのはこのためです。
筋原線維タンパク質 ミオシンやアクチンなど |
筋形質タンパク質 ミオグロビンや各種酵素など |
肉基質タンパク質 コラーゲンやエラスチンなど |
|
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形状 | 繊維状 | 球状 | 繊維状 |
溶解性 | 塩溶性 | 水溶性 | 不溶性 |
熱による変化 | 収縮、凝固 | 凝固 | 収縮、分解 |
こねてから塩を加えることもあります。
ひき肉をこねる前に塩を加えるのは筋原線維を溶かしてアクトミオシンの形成を促進させるためです。ひき肉をこねることによる粘りが重要でないレシピにおいては、こねる前には加えずに仕上げに(調味のために)加えることもあります。
仕組みが理解できていればレシピの改善にも役立ちます。
素手ではなくヘラでこねることを推奨される理由は?
ひき肉は脂肪を溶かさないようによくこねます。
こねる温度が高すぎるとひき肉の脂肪が溶け出してしまうためにアクトミオシン(タンパク質による網目構造)の形成が阻害されてしまいます。そのため「あらかじめ手を冷やしておく」「ボウルごと氷水に入れて冷やしながらこねる」などの対策がとられることもあります。
脂肪の融点は脂肪酸の構成により変化しますので畜種により異なります。
脂肪酸 飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸 |
融点 | |
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鶏肉 | 3.0:4.4:1.6 | 30~32℃ |
豚肉 | 3.0:3.8:1.1 | 33~46℃ |
牛肉 | 3.0:3.8:0.4 | 40~50℃ |
脂肪酸の融点は「飽和脂肪酸よりも一価不飽和脂肪酸の割合が高いほど」「一価不飽和脂肪酸よりも多価不飽和脂肪酸の割合が高いほど」に低くなります。温めずに食べることの多いお弁当に鶏肉が好まれているのは脂のくちどけが良く口内に脂肪が残りにくいためです。
ヒトの体温は36.5~37.2℃ほどです。
まとめ・ハンバーグのこね方は?
ハンバーグはひき肉をよくこねます。
ひき肉をこねることでハンバーグの生地に粘りがでて肉のうま味や水分を閉じ込めやすくなります。塩を加えてこねるのは筋原線維タンパク質が塩溶性であるためです。ミオシンが溶解して分散することでアクチンと結びやすくなります。
脂肪が溶けるとミオシンとアクチンが結びつきにくくなり、粘りがでにくくなります(アクトミオシンの形成が阻害されます)ので注意が必要です。