ぬか床は膨らむことがあります。
ぬか床の手入れをしていると、やけにふわふわとしていて手を入れると空気が抜けるような感覚を覚えることがあります。またそのようなぬか床では、アルコールやフルーツのような華やかな香りが強くなる傾向にあります。
ぬか床が多少膨らむ程度であれば問題はありません。
今回の記事は次のような人におすすめ!
- ぬか床が膨らんでしまう仕組みは?
- ぬか床が膨らむことにデメリットはないのか?
- ぬか床の膨らみを抑える方法は?
ぬか床は発酵により膨らむことがあります。
作ったばかりのぬか床は味噌のような感触ですが、発酵が活発になるに従いフカフカ(フワフワ)とした感触に変わっていくことがあります。これは酵母の働きにより二酸化炭素(炭酸ガス)が生成されているためであり、同時にアルコール香や果実香が生成されていきます。
不快な臭い(刺激臭など)でなければ問題はありません。
ぬか床が膨らむ仕組みは?
ぬか床が膨らむのは微生物により炭酸ガスが産生されているためです。
ぬか床には様々な微生物が生育しています。その中にはアルコール発酵するものも少なくなく、代表的な微生物としては酵母が挙げられます。酵母はアルコール発酵をしてアルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)を産生する微生物です。
酵母が活発になると炭酸ガスによりぬか床が膨らむようになります。
適度なアルコール香や果実香などはぬか床にとってのメリットといえます。しかしあまりにも酵母が優勢になりすぎると「ぬか漬けがピリピリするようになる」「アルコール臭くなる」「漬かりが悪くなる」などの問題が生じはじめます。
さらにはアルコール耐性のない乳酸菌が死滅してしまいます。
アルコール香や果実香の理由は?
ぬか床のアルコール香は酵母によるものです。
酵母はアルコール発酵することによりアルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)を産生します。膨らむぬか床にツンとくる刺激臭があるのはこのためです。さらにアルコールは有機酸とエステル結合することにより芳香のある化合物になります。
ぬか床の果実香はエステルによるものです。
エステル | におい | |
---|---|---|
酪酸+プロパノール | 酪酸プロピル | パイナップル系の果実香 |
酢酸+プロパノール | 酢酸プロピル | 梨系の果実香 |
プロピオン酸+エタノール | プロピオン酸エチル | バナナやパイナップル系の果実香 |
この段階のぬか床はとても良い香りです。
一般的なぬか床の香りと言えば「米ぬかの臭い」「熟成した発酵臭」などをイメージされるかと思いますが、エステル結合による芳醇な果実香(パイナップルやバナナなどのような香り)を知ってしまうとぬか漬けのイメージは覆されるかと思います。
それほどに良い香りです。
シンナーのような刺激臭がある?
エステル結合はシンナー臭(セメダイン臭)の原因にもなります。
アルコールと有機酸はエステル結合することにより芳香のある化合物になります。この縮合反応により得られる化合物には果実香(パイナップルやバナナのような香り)がありますので美味しいぬか漬けには欠かせないものになっています。
しかし、濃度が高すぎるとシンナー臭(セメダイン臭)になります。
たとえば酢酸とエタノールがエステル結合した酢酸エチルにはパイナップルのような果実香がありますが、酢酸エチルはシンナー・ラッカーなど塗料の溶剤やマニキュアの除光液として利用されている成分でもあります。
当然、濃度が高くなるとシンナー臭になります。
酵母の働きを抑制するには?
膨らみすぎるぬか床は良くありません。
ぬか床が膨らむのを抑制するには酵母の働きを抑制する必要があります。酵母は酸素のある環境では増えて、酸素のない環境ではアルコール発酵をする微生物です。そのため酵母だけを抑制するアプローチではなく、微生物全体の働きを抑制するような手段を取ります。
具体的には以下のような方法です。
方法 | 仕組み | |
---|---|---|
ぬか床の温度を下げる | 冷蔵庫管理にする | 微生物の生育適温(またはそれ以下)にする |
塩分濃度を高くする | 塩を足す | 微生物の働きが弱まる |
食材の抗菌性を利用する | 山椒の実などを加える | 微生物の働きが弱まる |
果実香とシンナー臭が分かれ目です。
果実香と感じられる範囲であればそのままでも問題ありませんが、シンナー臭だと感じられるようでは問題があります。微生物のコントロールには多少のタイムラグが生じますので、「少し果実香が強いかな?」と思ったらアルコール発酵を抑制させます。
ぬか床の手入れには早めの対応が求められます。
まとめ・ぬか床が膨らむ理由は?
ぬか床は酵母のアルコール発酵により膨らみます。
ぬか床が膨らむこと自体に悪影響はありませんが、過度に膨らむぬか床には「アルコール臭(シンナー臭)が強くなる」「ぬか漬けがピリピリする」「漬かりにくくなる」などのデメリットが生じやすくなりますので注意が必要です。
あまりにも膨らみすぎてしまう場合には涼しい場所に移しておくことをおすすめします。