ぬか床は変色することがあります。
立ち上げたばかりのぬか床の色は米ぬかの色(薄茶色)です。しかし手入れを続けていくうちに「表面だけが黒く変色していく」「全体の色が濃くなっていく」「部分的に黒っぽくなる」などの変化を感じられるようになることがあります。
ぬか床の変色には理由があります。
今回の記事は次のような人におすすめ!
- ぬか床の表面が黒く変色してしまう理由は?
- ぬか床全体の色が徐々に濃くなっていく理由は?
- 野菜を漬けたまわりなどに変色が起こる理由は?
ぬか床の変色には大きく3パターンがあります。
それが「ぬか床の酸化による黒ずみ」「メイラード反応(アミノ-カルボニル反応)によりぬか床の色が濃くなる反応」「野菜に含まれている水溶性の色素による変色(または色素と金属イオンが結びつくことによる発色)」です。いずれの変色にも害はありません。
例外的に変色の原因がカビ(ふわふわした円形状の変色)である場合には注意が必要です。
酸化による変色の特徴は?
ぬか床は空気に触れている部分が変色します。
立ち上げたばかりのぬか床は酸化により変色しやすい状態です。これは米ぬかや野菜に含まれているポリフェノール系物質や油が空気中の酸素によって酸化されるためであり、これらは酸化縮合という変化を起こして褐色物質に変化します。
これこそがぬか床の表面が黒ずむことのある理由です。
- ポリフェノール系物質や油など
- 酸素
- 酸化酵素(オキシダーゼ)
一つでも欠ければ酸化は起こりません。
また酸化の反応速度には「酸性pHにおいては極めて遅く、pHの上昇とともに指数関数的に増加する」という特徴があります。そのためぬか床の発酵が進んで乳酸菌が優位な状態になっているぬか床では酸化による変色は起こりにくくなります。
これらのことからもぬか床の表面の変色は立ち上げたばかりのぬか床に起こりやすい問題であり、ある程度発酵の進んだぬか床では起こりにくい問題となります。
メイラード反応による変色の特徴は?
ぬか床は熟成が進むほどに色が濃くなります。
熟成により色が濃くなっていくのはメイラード反応(アミノ-カルボニル反応)によるものです。メイラード反応はアミノ酸と還元糖の結合が出発点となってメラノイジンと呼ばれる褐色物質が生成される反応です。メイラード反応の途中には様々な香気成分が発生します。
メラノイジンは単一の物質ではないため、メイラード反応により発生する香気成分は反応させるアミノ酸の種類や加熱温度によって異なります。
味噌の色が濃くなっていくのと同じ反応です。
メイラード反応と聞いてイメージするのは焼き肉の焼き色などであることが多いかと思いますが、メイラード反応は(時間はかかるものの)低温でも進みます。低い温度で進むメイラード反応の方が丸みのある香りである傾向が強いため、味噌やぬか床は熟成が進むほどに好ましい香気が付与されていきます。
常温での手入れをしている場合には1年ほどで違いを感じられるようになります。
味噌を熟成させすぎると色合いが濃くなりすぎて個性的な風味になることからもあまり好まれませんが、ぬか床は足しぬかなどにより調整できることからも熟成期間が長いほどに(長く手入れをされているぬか床であるほどに)おいしくなる傾向があります。
野菜の色素による変色の特徴は?
野菜に含まれる水溶性の色素はぬか床に移ります。
野菜には水溶性の色素が含まれているものがあります。たとえばナスの紫色はナスニンと呼ばれるアントシアニン系の色素の一種です。アントシアニン系の色素は水溶性であるため、少なからずぬか床内にも流出します。
ナスのまわりが紫になるのを知っている人は少なくないはずです。
またナスニンの分子は金属イオンと結びつくことにより青紫色の化合物となって鮮やかに発色します。そのため鉄玉子などの入れられているぬか床では野菜から流出したアントシアン系の色素と金属イオンが結びつくこと変色の原因になることがあります。
全体的に黒ずむような変色ですが、害はありません。
まとめ・ぬか床が黒くなる仕組みは?
ぬか床は黒ずむことがあります。
変色の原因が酸化である場合には乳酸菌が増えることによるpHの低下に伴い徐々に起こりにくくなります。原因がメイラード反応である場合には黒ずみというよりは色が濃くなっていく様な変化です。原因がアントシアニン系の色素である場合はナスなどを漬ける機会が多いほどに起こりやすくなります。
いずれの変色にも大きな問題はありません。