ぬか床には天地返しが必要です。

天地返しとはぬか床の上部と下部を入れ替えるように混ぜることです。ぬか床は天地返しにより微生物のバランスを整えます。天地返しの頻度が低すぎれば強い酸味や不快な臭いの原因になりますし、頻度が高すぎればアルコール臭が強くなる傾向にあります。

ぬか床はかき混ぜすぎてもかき混ぜなさ過ぎても良くありません。

カヤカヤ

今回の記事は次のような人におすすめ!

  • ぬか床のかき混ぜ方を知りたい。
  • 天地返しにはどのような効果があるのか?
  • ぬか床の状態による天地返しの頻度は?

ぬか床をかき混ぜる目的は空気に触れさせることです。

天地返しをすると空気を好む微生物(酵母など)が増えて空気を好まない微生物(乳酸菌や酪酸菌など)が減ります。これにより「乳酸菌が増えすぎることによる強い酸味」「酪酸菌が増えすぎることによる不快な臭い」「酵母が増えすぎることによるアルコール臭」などを防げます。

また部分的な異常発酵によりぬか床が傷んでしまうのを防げます。

ぬか床を天地返しする目的は?

ぬか床は天地返しにより微生物のバランスを整えます。

ぬか床に生育する微生物には好気性菌(酸素を好む微生物)と嫌気性菌(酸素を嫌う微生物)の2通りがあります。具体的には酸味や不快な臭いの原因となる乳酸菌や酪酸菌などは嫌気性菌であり、アルコール臭や炭酸ガスの原因となる酵母などが好気性菌です。

どちらが増えすぎてもぬか床は傷みます。

微生物 生成物
嫌気性菌 乳酸菌
酪酸菌
乳酸による酸味
酪酸による不快臭
好気性菌 酵母 アルコールや二酸化炭素(炭酸ガス)

また嫌気性菌にもタイプがあります。

  • 通性嫌気性菌(乳酸菌など):酸素により著しく活動が鈍る
  • 偏性嫌気性菌(酪酸菌など):大気レベルの酸素でも死滅する

天地返しの目的は空気に触れさせることです。

これにより天地返しの頻度の低いぬか床では「乳酸菌が増えすぎる(酸敗)」「酪酸菌が増える(無精香)」「酵母がアルコール発酵をする」などの反応が起こり、天地返しの頻度の高いぬか床では「乳酸菌が減る」「酪酸菌が死滅する」「酵母が増える」などの反応が起こります。

ぬか床の天地返しは過不足なく行うことがポイントになります。

かき混ぜる頻度の決め方は?

天地返しの頻度に決まりはありません。

よく言われているのは「基本は1日1回」「夏は1日2回」「冬は数日おきに」などですが、ぬか床に生育している微生物は温度や水分量に影響を受けます。たとえば乳酸菌には「生育適温20~45℃」「生育速度は速い」という特徴があり、酵母には「生育適温10~35℃」「生育速度は遅い」という特徴があります。

そのため温度と酸味の強さで判断します。

  • 25℃以上(強い酸味):1日2回
  • 20℃前後(適度な酸味):1日1回
  • 15℃以下(物足りない酸味):数日おき

ぬか床の適温は20℃前後です。

25℃を超える季節には乳酸菌が増えすぎてしまうために酸敗(酸味が強くなりすぎる劣化)が起こりやすくなり、15℃以下が続くような季節には微生物全体の活動が鈍るために香味やうま味に欠ける物足りないぬか漬けになる傾向にあります。

特に注意して欲しいのが高温になる季節です。

乳酸菌は酸に強い微生物ですが、乳酸菌の異常発酵により酸が強くなりすぎてしまう(pHが下がり過ぎてしまう)と乳酸菌は自らが生成した乳酸により死滅してしまいます。乳酸菌が死滅したぬか床に待ち受けるのは急激なpHの上昇による腐敗菌の増殖です。

そうならないためにも、酸味が強くなりすぎた場合には「天地返しの頻度を高くする」「足しぬかをして水分量を減らす」「塩分濃度を高くする」「実山椒や粉ガラシなどを多めに加える」「冷蔵庫管理に切り替える」などにより乳酸菌による異常発酵を抑える必要があります。

放置してしまうとぬか床をダメにします。

補足

乳酸菌を増やすためには天地返しの頻度を減らします。新しいぬか床を1週間ほど放置するのは乳酸菌を増やすためであり、足しぬかの量が多い時にも用いられるテクニックです。天地返しの頻度を減らすことは「ぬか床を休ませる」と表現されたりもします。

まとめ・ぬか床の混ぜ方は?

ぬか床は空気に触れさせるためにかき混ぜます。

かき混ぜる(天地返しをする)ことにより空気を好む微生物(酵母など)が増えて、空気を好まない微生物(乳酸菌や酪酸菌など)が減ります。これにより乳酸菌による爽やかな酸味と酵母の生成するアルコールによる華やかな香りの付与されたおいしいぬか漬けになります。

天地返しの頻度は高すぎても低すぎても良くありません。