はじめたばかりのぬか漬けはおいしくありません。

おいしいぬか漬けには、爽やかな酸味と複雑なうま味や香味があります。しかし立ち上げた(作った)ばかりのぬか床には微生物の多様性がありませんので、「しょっぱいだけ」「ぬか臭いだけ」「うま味やコクが足りない」などのおいしくないぬか漬けになります。

これらはぬか床が新しすぎるために起こる問題です。

カヤカヤ

今回の記事は次のような人におすすめ!

  • ぬか漬けがしょっぱいだけで美味しくない。
  • うまみが足りなくて美味しくない。
  • 立ち上げたばかりのぬか床が美味しくない理由は?

ぬか漬けがおいしく漬かるようになるには時間がかかります。

ぬか床は安全に使えるようになるまでには1~2週間、本当に意味でのぬか床と呼べるようになるまでには3カ月間ほどの時間を要します。これは食中毒の原因になりうる雑菌の駆逐に1~2週間ほどかかり、微生物の多様性が整うまでに3カ月間ほどの時間がかかるためです。

それ以前のぬか床は未完成な状態であるということです。

若いぬか床がおいしく漬からない理由

若いぬか床はおいしく漬かりません。

ぬか漬けのおいしさには「乳酸菌による爽やかな酸味」「アルコールと有機酸が結びつくことにより生じる華やかな香味」「微生物の多様性による複雑な風味やコク」などが欠かせませんが、ぬか床の熟成には年単位での時間を要します。

このことからも最低でも3カ月間(夏で2カ月、冬で4カ月)は続けてみることをおすすめします。ぬか漬けが合わないと判断するのはそれからでも遅くはありません。

微生物の状態 ぬか漬けの味
0~2週間 乳酸菌と雑菌がせめぎ合っている状態 食中毒のリスクがある
2週間から3カ月間 微生物の多様性が生まれている状態 角のある塩味やぬか臭さが目立つ
鮮烈で華やかな香りが生じる
3ヶ月以降 微生物の構成がさらに複雑になっていく 酸味や香りのバランスが整っていく
数年後 生育速度の遅い微生物が増える まろやかになる
コク深くなる

漬物が漬かるのは塩の作用です。

野菜は細胞と細胞壁と細胞膜によって構成されていますが、細胞のまわりに濃度の高い食塩水があると浸透圧の作用により半透膜の性質を持つ細胞膜を通して細胞内の水分が外に浸出して原形質分離を起こすようになります。

このしんなりした状態を漬かると言います。

ぬか床が若すぎても漬かること自体に問題はありませんが、熟成したぬか床の複雑な香味の代わりに若すぎるぬか床の荒々しい米ぬか臭さが付与されることになりますので、残念ながらおいしいぬか漬けにはなりません。

しょっぱいだけのぬか臭いぬか漬けになるのは、ぬか床の熟成不足です。

実際の塩分濃度以上にしょっぱく感じられる理由

ぬか漬けの塩分濃度は2~5%ほどです。

食品成分表2021によると「蕪のぬかみそ漬け:葉3.8%、根皮つき2.2%、根皮なし6.9%」「大根のぬかみそ漬け:3.8%」「胡瓜のぬかみそ漬け:5.3%」などの記載があります。料理としては高い値だと思われるかもしれませんが、漬物としては一般的な値です。

しかし若すぎるぬか床はしょっぱく感じられます。

ぬか床は熟成により微生物の多様性が生まれています。微生物の多様性が生まれると様々な成分(風味)が生成されますが、その中には塩味に対しての抑制効果(2種類以上の味を混ぜ合わせた時に一方の味が弱められる現象)を発揮するものもあります。

そのためぬか床の熟成が進むと塩味が際立たなくなっていきます。

また長年手入れをされているぬか床では水分の水素結合によるクラスター(2個以上の分子が比較的に弱い相互作用で集合している状態)が大きくなり、塩を取り囲むような形で存在するようになります。そのため角が取れて丸みのある塩味になります。

これはぬか床の味がまろやかになっていく一つの要因でもあります。

時間経過によるぬか床の変化とは?

ぬか床の熟成には時間がかかります。

立ち上げたばかりのぬか床には乳酸球菌や雑菌(グラム陰性菌など)が増えますが雑菌は乳酸球菌の生成する乳酸により死滅していきます。さらに乳酸が増えてくると乳酸球菌も死滅していき(より乳酸耐性の高い)乳酸桿菌が増えていきます。

この段階になると安全に食べられるようになります。

はじめたばかりのぬか床の熟成を進めるには、とにかく乳酸菌を増やすことです。乳酸菌は嫌気性(酸素を嫌う微生物)であることからも「天地返しの頻度を減らす」「少し過湿気味な水分管理をする」などにより乳酸菌を増やすことができます。

3カ月(夏で2カ月、冬で4カ月)ほどで一応の安定した状態になりますが、手入れを続けていくうちに少しずつですがコク深くまろやかな風味に変化していきます。

補足

ぬか床は時間の経過とともにコク深くも角が取れて丸みのある味わいになりますが、初期の華やかさ(有機酸とアルコールによる華やかな香味)は失われていきます。そのため足しぬかの量や頻度により自分好みの味に調節していきます。

まとめ・ぬか漬けがしょっぱい?

はじめたばかりのぬか漬けは塩味が際立ちます。

立ち上げたばかりのぬか床では「ぬか臭くしょっぱいだけのぬか漬け」になりがちです。しかし熟成が進むほどに「抑制効果により塩味が際立たなくなる」「水クラスターの影響により塩味の角が取れてまろやかに感じられるようになる」などの効果が得られるようになります。

ぬか漬けには時間でしか解決できない問題があります。