アルミ鍋は体に悪いと言われることがあります。
アルミニウムの調理道具を利用すると「アルミニウムが溶け出して健康への害がある」という意見があります。事実、ラットを用いた動物実験では(アルミニウムの多量投与により)害が生じてしまうことが確認されています。
このことからもアルミニウムには暫定的な許容量が設定されています。
今回の記事は次のような人におすすめ!
- アルミの調理道具はアルミが溶け出す?
- アルミニウム製調理道具の注意点は?
- 体に悪いというのは本当なのか?
アルミニウムの害は難しい問題です。
雪平鍋やアルミニウムのフライパンからアルミニウムの溶出がある(イオン化している)のは事実です。しかし厚生労働省の示している数値では「すべての調理道具をアルミニウムに切り替えたとしても問題の起こらない程度の値」になっています。
そのため多くの家庭や飲食店ではアルミニウムの調理道具が利用されています。
アルミニウム製の調理道具は体に悪いのか?
アルミニウムには害があります。
ラットを用いた動物実験ではありますが、アルミニウムの多量投与により「腎臓や膀胱への影響」や「握力の低下」などが認められています。このことからもJECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)では人が一生涯摂取し続けても問題のない暫定的な許容量を設定しています。
それが1週間あたり2mg/体重1kgです。
ちなみにアルツハイマー病との因果関係は証明されていません。以前、テレビなどを通して「アルミニウムとアルツハイマー病の関連性」が議論されていたことからも「アルミニウム=アルツハイマーの原因」とイメージされる方は少なくありません。
しかし現在でもこの因果関係を証明する根拠はありませんし、否定的な意見が多いことからも過度に心配する必要はないかと思われます。
アルミニウムの調理道具には取り扱い上の注意点があります。ステンレス鍋やフッ素樹脂加工(テフロン加工など)の鍋であれば食材を入れっぱなしにしていても大きな問題はありませんが、アルミニウム製の雪平鍋などは(アルミニウムの溶出量が大きくなることからも)食材の保存はできません。
アルミニウムの摂取由来は?
アルミニウムは日常に存在する物質です。
飲食に由来するアルミニウムとしては「アルミニウム添加物由来」「着色料(アルミニウムレーキ)由来」「未加工食品由来」「アルミニウム製器具、容器包装由来」「水道水由来」「その他の由来」などがあります。
ちなみに食品添加物は以下のように表示されています。
用途 | 表示名 |
---|---|
膨張剤 | 膨張剤、ベーキングパウダー ふくらし粉 |
色止め材、形状安定剤、品質安定剤 | 硫酸アルミニウムカリウム、ミョウバン、カリミョウバン、硫酸アルミニウムアンモニウム、アンモニウムミョウバン |
またアルミニウムを含む食品添加物の基準は見直しが進められています。
以前であればベーキングパウダーには酸性剤として焼ミョウバンが使われていましたが、現在多くのベーキングパウダーではアルミニウム不使用になっています。ちなみに手持ちのベーキングパウダーを見てみると、「ガス発生剤:炭酸水素ナトリウム」「酸性剤:第一リン酸カルシウム」「遮断剤:コーンスターチ」となっていました。
このことからも、アルミニウムを気にする場合には成分表示を確認できる家庭料理よりも、アルミニウムを含む食品添加物の使用基準が設定されていない外食や市販のお菓子やパン類などを気にするべきだといえます。
家庭料理はアルミニウムのリスクの低い食事だといえます。
アルミニウム製の調理道具が利用されている理由は?
アルミニウム製の調理道具は(正しく利用できていれば)大きな問題になるとは考えられません。
厚生労働省と独立行政法人 国立健康・栄養研究所による調査によると、すべての年齢層において暫定的な許容量を下回っています。もっとも割合の大きかった小児においても許容量の約43%となっていますので過度に心配する必要はないと考えられます。
そもそも調理道具由来のアルミニウム摂取量は大きくありません。
飲食に由来するアルミニウム摂取量の合計は、小児、国民全体(一部、成人全体のデータを含む)について、最大1.31、0.68mg/kg 体重/週であり、JECFAによるPTWIに対する比率はそれぞれ、約65%、約34%である。(※内アルミニウム製器具・容器包装由来の摂取量は0.12、0.07mg/kg)
引用元: 「アルミニウムの摂取量推計について」(厚生労働省)
このことからもアルミニウム製の調理道具を毛嫌いする必要はありません。
アルミニウム製の調理道具にはアルミニウム特有の性質が利用されています。たとえば食材の下ごしらえに利用されることの多い雪平鍋はアルミニウムであるからこそお湯が早く沸きますし、パスタやソースなどに利用されることの多いアルミフライパンはアルミニウムであるからこそ繊細な温度調整が可能になっています。
一部の情報ではなく総合的に判断することをおすすめします。
まとめ・雪平鍋やアルミフライパンは体に悪い?
アルミニウムの害は難しい問題です。
「少しでもリスクがあるのであれば使わない方が無難である」という意見がある一方、「調理道具におけるアルミニウムの特性を利用しない手はない」という意見もあります。現状では示されている値に問題がないことや調理特性のメリットが大きいために多くの家庭や飲食店ではアルミニウムの調理道具が利用されています。
これらのことからも当ブログにおきましては「(正しく利用できているのであれば)問題はないのではないか?」という考えを持っています。