和食のレシピには酒と表記されていることがあります。
和食における酒とは清酒(日本酒)のことであり、広く流通している安価な料理酒ではレシピの再現性は低くなるためにおすすめできません。これは安価な料理酒には「不可飲処理により塩味が含まれている」「うま味(コハク酸など)が不十分」「風味が悪い」などのデメリットがあるためです。
このことからも料理酒には料理用清酒をおすすめしています。
今回の記事は次のような人におすすめ!
- 料理酒とは何か?
- 料理酒の役割は?
- 料理酒を使わないことによるデメリットは?
料理酒には様々な効果があります。
具体的には「味がしみ込みやすくなる」「不快な臭いが和らぐ」「風味がよくなる」「うま味が付与される」「保存性が良くなる」「肉や魚が軟らかくなりやすい」などです。
和食には不可欠な調味料といっても過言ではありません。
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料理酒の効果とは?
料理酒の効果は主に5点です。
それが「味が入りやすくなる」「不快な臭いを揮発させることができる」「保存性が良くなる」「風味がよくなる」「肉や魚が軟らかくなる」です。これらのことからも日本料理には欠かすことのできない調味料とされています。
以下が効果の根拠になります。
- 味が入りやすい:アルコールは分子量が小さい
- 不快な臭いの緩和:アルコールの共沸によるもの
- 保存性の向上:アルコールと酸性pHによるもの
- 風味がよくなる:清酒の発酵産物によるもの
- 肉や魚が軟らかくなる:酸性プロテアーゼが活性化するため
これらの効果は調味料の順番により変化します。
たとえば味をしみ込ませたい場合には調味料の分子量を考慮して加えることがポイントになりますし、肉や魚を柔らかくしたい場合には料理酒をもみ込むなどしてから調理することがポイントになります。
以下が各効果の詳細です。
味が入りやすくなる仕組み
料理酒を使うと味が入りやすくなります。
調味料には分子量の違いがあります。味を含ませたい料理の場合、すべての調味料を同時に加えてしまうと分子量の小さな塩味ばかりが入ってしまって甘味などが入りにくくなってしまうことがありますが、アルコールには他の風味などを引き連れて食材に入っていくような効果が望めます。
以下は主な調味料の分子量です。
- 料理酒(アルコール):46.07
- 塩(塩化ナトリウム):58.5
- 砂糖(ショ糖):342
- 酢(酢酸):60
調味料の「さしすせそ」には意味があります。
分子量の大きな砂糖は、分子量の小さな食塩よりも先に加えなければ食材にしみ込んでいきにくくなります。そのため食塩や揮発性の成分を含む調味料(酢・醤油・味噌など)は調理の終盤に加えるのがセオリーとなっています。
またアルコールには「同時に存在する甘味やうま味などを引き連れて食材に入っていく」ような働きがありますので、食材に味が入りやすくなります。
このことからも料理酒は食材に味をしみ込ませるためにも利用されます。
不快な臭いが和らぐ仕組み
料理酒は食材の臭みを和らげます。
多くの食材には原料由来の臭みがあります。たとえば魚介類には生臭さがありますし、肉類には畜肉種ごとに特有の臭みがあります。また植物にも種類ごとに異なる特有の臭み(クセ)があります。
アルコールにはこれら原料由来の臭みへの消臭効果があります。
これにはアルコールの有する沸点が約78℃であるという特徴が関係しています。アルコールは水よりも低い温度で揮発するため、アルコールが揮発する際には(一部の)臭い成分も同時に揮発していきます。
この仕組みは物理的消臭方法(アルコールによる共沸)と呼ばれる反応です。
保存性が高まる仕組み
料理酒には料理の保存性を高める効果があります。
アルコールには殺菌作用があります。程度の差はあるものの料理酒に含まれているアルコールは料理に残りますので、アルコールの殺菌作用により料理の保存性を高めることに一役買ってくれることになります。
通常の調理でアルコールが完全に揮発することはありません。
「アルコールがどの程度残るのか?」に関しては調理法や調理道具などによっても変化しますが、一般的な煮込み料理などでは(最初に加えたアルコールの)5%ほど、加熱時間が短い場合には10~50%ほどのアルコールが残っても不思議ではないとされています。
そのためアルコールが気になる場合には煮切り酒などにしてから加えるのがセオリーとされています。
風味が良くなる仕組み
料理酒には風味をよくする効果があります。
日本料理における料理酒とは日本酒(清酒)を指します。日本酒は蒸米に米麹と水を加えて酵母菌によるアルコール発酵を促した醸造酒ですので、日本酒には複雑な甘味やうま味(コハク酸)などが含まれています。
これらの風味が料理を美味しくします。
このことからも安すぎる料理酒はおすすめできません。安価な料理酒に料理を美味しくする芳醇な風味(発酵産物)は含まれていません。これは安価な料理酒の多くが醸造アルコールを調味した簡易的な料理酒であるためです。
料理酒には料理用清酒をおすすめします。
肉や魚が軟らかくなる仕組み
料理酒には肉や魚を軟らかくする効果があります。
日本酒(清酒)の水素イオン指数はpH4.0~4.5です。肉や魚のタンパク質には酸性にすることで「筋原線維タンパク質が緩んで保水性が向上する」「酸性プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)が活性化する」などの性質があります。
このことからも肉や魚は料理酒をもみ込んでおくことで軟らかくなります。
唐揚げを作るときに料理酒をもみ込むのはこのためです。ちなみに共通点の多い調味料である本みりんの水素イオン指数はpH5.0~6.0であるために料理酒のように肉や魚を軟らかくする効果は望めません。
料理酒と本みりんの違いは甘味だけではありませんので注意が必要です。
まとめ・料理酒(調理用清酒)の効果は?
料理酒には多くのメリットがあります。
日本料理における料理酒とは日本酒(清酒)のことであり、14%前後のアルコールと醸造時に生じる芳醇な香味成分が含まれています。これにより「食材に味がしみ込みやすくなる」「食材特有の不快な臭いを和らげる」「保存性が高まる」「風味がよくなる」「肉が柔らかくなる(うま味が増す)」などのメリットが得られることになります。
しかしこれらの効果はあくまでもまともな日本酒の有する効果であるため、あまりにも安すぎる料理酒の使用はおすすめできません。特定の酒が決まっていない場合には料理用清酒の使用をおすすめします。





